地震や台風等で公共交通機関が停止したり、従業員を危険にさらさないために自宅待機を認める際に特別休暇制度を設ける場合の留意点を教えていただきたい。
従業員の安全確保の観点から、大震災や台風など本人に責のない自然災害発生時に適用する特別休暇(以下「災害特別休暇」という。)の設定を検討するケースが増えています。
災害特別休暇の制度設計においては、付与する事由・休暇の日数と休暇期間中の給与の取扱い等を明確にすることが重要であり、就業規則に記載して運用する必要があります。
自然災害の規模や被害状況の予想は不可能であり、また居住地や利用する交通機関により状況が異なることから、社員の安全確保と業務への影響、会社の負担や公平性について留意し、会社の実情に応じた制度を設計する必要があると考えます。
<POINT1.災害特別休暇の給与>
災害特別休暇は任意で設定するものなので、その期間の給与を有給とするか無給とするかは会社が自由に設定することができます。
有給とする場合には、基本給以外の交通費、役職手当、皆勤手当などの手当についても取扱いを明確にし、就業規則に明記します。
なお、災害特別休暇を設けない場合であって、自宅待機させる場合の、自然災害における自宅待機時間の取扱いについては、「自然災害に備えての自宅待機時間は労働時間か」をご確認ください。
<POINT2.災害特別休暇の事由・日数>
災害特別休暇の付与日数(期間)は給与と同様、会社が自由に設定することができますが、どのような場合(事由)に、何日付与されるのか等、要件を明確にしておく必要があります。
日数(期間)については、通常の復旧状況の予想の範囲として1週間程度を設定している例がみられますが、この場合も、労働日あるいは暦日のいずれで算定するか明確にします。
「原則として〇日の範囲内の期間で会社が必要と認める期間」と定め、地震や台風による水害等の災害の規模に応じて付与する日数を決めて運用することも現実的な対処と考えます。
なお、人事院公表の「民間企業の勤務条件制度(令和2年調査結果)」によれば、災害時の休暇制度について、「制度あり」とした企業の割合は45.2%となっており、その対象となる住居をみると、「従業員が現に居住する住居」としている企業の割合が97.8%と最も多くなっています。
また、災害時の休暇の日数に「上限がない」としている企業の割合は79.4%、とのことです。
<POINT3.その他>
自然災害発生時の連絡方法や災害特別休暇の申請方法についてルールを定め、安全確認、安全確保の趣旨に則り運用することが重要です。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※