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■昼食を取りつつ行うミーティングについて考える

 当社では、四半期毎に部単位で、仕事の振り返りと今後の展望を話し合ってもらうために、会社隣のレストランで昼食会を実施している。お昼の休憩にかかるが、食事も取りますので問題ないだろうと考えていた。

 ところが、従業員Aから、「打合せ自体は業務としての内容なので労働時間になるのではないか」と申し出があった。

 労働時間であるとするならば、今後はどのような点に注意して運用すればよいのか。

 業務内容に密接に関係する昼食会であり、参加が任意で、不参加による特段の不利益がない場合を除いて労働時間となると考えられます。

 したがって、この場合、参加が任意で、不参加による特段の不利益がない場合を除いて労働時間であるとし、別途休憩時間を付与する必要があると考えます。

<POINT1.労働基準法上の労働時間>

 労働基準法第32条の労働時間について、最高裁は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい、労働時間に該当するか否かは、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」としています(三菱重工業長崎造船所事件[最判H12.3.9])。

 

 

<POINT2.労働基準法上の休憩時間>

 労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合には、少なくとも45分8時間を超える場合には、少なくとも1時間の休憩時間を、原則として一斉に与えなければならないとされています。

 また、休憩時間は労働者に自由に利用させなければならない、と規定しています。

 そして、行政解釈において、使用者が労働者に対し付与を義務付けられている休憩時間とは、「労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間」とされています(昭22.9.13発基17)。

 

 

<POINT3.ランチミーティングの労働時間性>

 昼食を取りながら行う会議は、一般的に「ランチミーティング」と呼ばれます。そして、通常は休憩時間に昼食を取りますから、ランチミーティングを行っている多くの会社では、結果として、休憩時間中にランチミーティングが行われていることが考えられます。

 前述のとおり、休憩時間は、労働から離れることが保障されている必要があります。ランチミーティングにおける打合せの内容が業務に関するものであって、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる場合には、原則として労働時間となります。

 また、行政解釈では、就業時間外の教育訓練について、「就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。」とされていることからも、業務内容に密接に関係するランチミーティングへの出席は、参加が任意なもので、不参加による特段の不利益がない場合を除いて、労働時間になると言えます。

 劇団で行われた公演の打ち上げについて、外部のキャストをもてなす目的で行われていたものの、欠席も可能で参加を強制されていたとまでは認められないこと、会費は会社負担で、劇団員も無料で飲食可能であったことからすれば、賃金支払義務を発生させる業務(労働時間)にあたらないとした判例があります(エアースタジオ事件[東京高判R2.9.3])。

 

 

<POINT4.お題の場合>

 お題の場合、休憩時間帯における昼食会で「仕事の振り返りと今後の展望を話し合う」ことを指示し、四半期ごとの出席を強制している場合には、昼食会の時間は労働時間となります。

 したがって、昼食会を行う日は、別途休憩時間を与える必要があると考えます。

 この場合、一斉休憩の範囲内であることを確認、または一斉休憩除外の労使協定を締結したうえで、付与することになります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条、34条
  • 昭22.9.13発基17
  • 平11.3.31基発168
  • 三菱重工業長崎造船所事件[最判H12.3.9]
  • エアースタジオ事件[東京高判R2.9.3]