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■短時間正社員制度を育児短時間勤務制度として活用できるか

 当社では、短時間正社員制度の導入を検討している。

 そこで、この短時間正社員制度を育児短時間勤務制度として活用できないかという意見が出たが、そのようなことは可能か。

 短時間正社員制度を育児短時間勤務制度として活用することは可能です。この場合、育児・介護休業法で定める育児短時間勤務制度の要件を満たすことが必要です。

<POINT1.短時間正社員制度>

 これまでの正社員像は、一律の所定労働時間で働き、残業を命じられた場合には対応することが必然という、一律のものでしかありませんでした。近年では、結婚・出産・子の養育等のライフイベント、ボランティア活動や自己啓発等と仕事との両立、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」の観点から、働き方の見直しが注目されており、国や企業によって、さまざまな取組が進められています。その一環として、短時間正社員制度の導入があげられます。

 

<POINT2.育児短時間勤務制度>

 事業主は、3歳に満たない子(特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子、その他これらに準ずる子を含みます。以下同じです。)を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる育児短時間勤務制度(育児のための所定労働時間の短縮措置)を設けることが義務づけられています。また、この制度を策定するうえでは、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。ここでの「原則として」とは、例えば通常の所定労働時間が7時間45分である事業所において育児短時間勤務を5時間45分とする場合には、育児短時間勤務制度として許容されるということになります。

 なお、1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けたうえで、1日の所定労働時間を7時間とする措置や、隔日勤務等の所定労働日数を短縮する措置など所定労働時間を短縮する措置をあわせて講じることはできます。

 

<POINT3.育児短時間勤務の対象者>

 次のすべてに該当する者は、育児短時間勤務の対象者になります。

①3歳に満たない子を養育する者

②1日の所定労働時間が6時間以下でない者

③日々雇用される者でない者

④この制度が適用される期間中に育児休業をしていない者

⑤労使協定により適用除外とされた者でない者

 

 

<POINT4.労使協定によって除外できる労働者>

 次のいずれかに該当する者については、労使協定により育児短時間勤務制度の対象外とすることができます。

①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない者

②1週間の所定労働日数が2日以下の者

③業務の性質または業務の実施体制に照らして、育児短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる者

 なお、③については、客観的にみて「困難」と認められない業務については、この制度の適用除外とすることはできません。「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」においては、この制度を講ずることが困難である業務として、次のように例示的に示されています。

 ア.業務の性質に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務

 イ.業務の実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務。労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務

 ウ.業務の性質および実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難と認められる業務

a.流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務

b.交替制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務

c.個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務

 

<POINT5.短時間正社員制度と育児短時間勤務制度>

 ワーク・ライフ・バランスの観点から短時間正社員制度を導入し、同時に、育児短時間勤務として活用することは可能です。ただし、この場合、短時間正社員制度が、育児・介護休業法で定める育児短時間勤務制度の要件を満たす必要があります。

 例えば、短縮された所定労働時間について、短時間正社員制度で7時間と定めたとしても、育児短時間勤務制度では、育児・介護休業法により原則として6時間とすることが求められていますので、要件を満たしていません。

 また、適用される対象者について、短時間正社員制度で「会社が認めた者」としても、育児短時間勤務制度では、同法により、適用を除外できる者は限定されていますので、やはり要件を満たさないことになります。

 このように、短時間正社員制度を育児短時間勤務制度として活用する場合は、法的要件を満たしつつ、多様な働き方を可能とする制度の構築を検討することになります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 育児・介護休業法2条、23条
  • 育児・介護休業則72条~74条
  • 平21.12.28厚労告509