当社には、海外企業との交渉が多い部署がある。
その部署は、業務量が多いため長時間労働になる上、時差の関係から業務時間が深夜に及ぶこともあるため、現在は男性従業員のみが在籍している。
今回、新たに男性従業員を当部署へ配置転換することを考えているが、社内には男女差別ではないかという声がある。
女性従業員の配置も検討する必要があるのか。
貴社の人事配置についての考え方やその具体的な基準などの詳細がわからないので断定はできませんが、ご質問からわかる範囲で判断すれば、貴社のケースは、性別を理由とする配置の差別に該当し、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」といいます。)第6条違反となるおそれがあるものと考えられます。
貴社としては、男女雇用機会均等法第6条違反を是正していく必要があるので、ご質問の対象部署に男性従業員だけではなく女性従業員の配置も検討していく必要があります。
なお、働き方改革で長時間労働の解消など働きやすい環境の整備が求められている中で、貴社としては、ご質問の対象部署も含め誰でも能力と適正に応じた配置をできる職場環境を確立していくことが肝要と考えます。
<POINT1.基本的な考え方>
男女雇用機会均等法においては、第6条第1号において、労働者の性別を理由として『労働者の配置』についても差別的取扱いをしてはならないと規定されています。
そして、男女雇用機会均等法により禁止されている性差別の内容を具体的に規定している「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(以下「性差別禁止指針」という。)においては、その第2 3(2)イ②において例示として、同じ雇用区分において「時間外労働や深夜業の多い職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。」が掲げられています。
ただし、例外として、性差別禁止指針の第2 14(2)に掲げる場合には、男女雇用機会均等法違反とはならないとされています。
具体的には、
①ア.芸術、芸能分野における表現の真実性の要請
イ.守衛、警備員等の防犯上の要請
ウ.宗教上、 風紀上、スポーツ競技の性質上などから男女どちらかに限る場合
②法律に基づく性別による就業制限業金がある場合
③風俗 風習の違いがある海外勤務業において特別の事情がある場合
においては例外が認められています。
<POINT2.貴社のケース>
お題の配置の現状をみますと、お題の対象部署にはこれまで男性従業員のみを配置し、女性従業員は配置していないということですが、このような取扱いに合理的な理由があるかどうかを考える必要があります。
業務量が多く長時間労働であり、深夜労働もあるという部署は、一般的に労働者にとっては労働条件が厳しい職場といえるかもしれません。
しかし、それは労働者の性別にかかわらず当てはまることであり、女性従業員のみをごお題の対象部署に配置の合理的な理由とはなりません。
ちなみに、労働基準法においては、妊産婦については時間外労働や深夜業についての特別の規制が設けられていますが、それ以外の一般の女性労働者ついては男性労働者と同様の時間外労働や深夜労働の規制の下にあります。
また、お題のケースは、前述の男女雇用機会均等法の違反とはならない例外の場合にも該当しないものと考えられます。
したがって、単に長時間労働や深夜業があるという理由では、男性従業員と女性従業員を区別して配置をすることはできません。
<POINT3.まとめ>
お題の人事配置についての考え方や乗その具体的な基準などの詳細がわからないので断定はできませんが、お題からわかる範囲で判断すれば、お題のケースは性別を理由とする配置の差別に該当し、男女雇用機会均等法第6条違反となるおそれがあるものと考えられます。
お題の会社としては、男女雇用機会均等法第6条違反を是正していく必要があるので、お題の対象部署に男性従業員だけではなく女性従業員の配置も検討していく必要があります。
なお、働き方改革で長時間労働の解消など働きやすい環境の整備が求められている中で、お題の会社は、お題の対象部署も含め誰でも能力と適正に応じた配置をできる職場環境を確立していくことが肝要と考えます。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
≪参考となる法令・通達など≫
- 労基法66条
- 均等法6条
- 平18.10.11厚労告614