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■三六協定の締結の当事者が管理職者になった場合

 当社では、三六協定の労働者側の当事者として「労働者の過半数を代表する者」を選出し、協定を締結して1年ごとに更新してきたが、今年1月の更新時に労働者側代表に選ばれたAが4月の異動で管理職者に昇格した。

 この場合、新たに労働者側代表を選出し直し、速やかに協定を締結し直す必要があるのか。

 三六協定は、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者と書面で締結しなければなりません。

 この場合、『「労働者の過半数を代表する者」との協定は、三六協定の成立要件であるにとどまり、三六協定の存続要件ではない』とされています。

 したがって、労働者代表が管理職者に昇格し「労働者代表」の要件からはずれた場合でも、三六協定の有効期間中(通常1年)は新たな「労働者代表」を選出して三六協定を再締結する必要はありません。

<POINT1.三六協定>

 労働基準法では、原則として法定労働時間は1日8時間、1週40時間、法定休日は1週間に1日と定めています。この法定の労働時間を超えて労働させる場合、または法定の休日に労働させる場合には労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届出をすることが義務付けられています。この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、一般に三六協定と呼ばれています。

 三六協定は、事業所単位で締結する必要があり、下記に掲げる内容を定めることとされています。

  1. 労働時間を延長し、または休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
  2. 対象期間(労働時間を延長し、または休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものとされています。4.において同じ。)
  3. 労働時間を延長し、または休日に労働させることができる場合
  4. 対象期間における1日、1箇月および1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間または労働させることができる休日の日数
  5. 労働時間の延長および休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項(有効期間の定め等)

 三六協定の締結がなく法定労働時間を超えて労働させる場合は、違法となり罰則の対象となります。

 

 

<POINT2.労働者代表の選出>

 「労働者代表」の選出については労働基準法施行規則で被選定者および手続について次の1.2.のように定められています。

  1. 事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者でないこと
  2. 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと

 1.の「監督もしくは管理の地位にある者」とは、労働時間などの規制を受けない者のこととされています。

 労働者代表が、事業主から一方的に指名されている場合、親睦会の代表者または一定の役職者が自動的に労働者代表となっている場合、一定の役職者が互選により労働者代表を選出する場合に締結された三六協定は無効となります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条、36条、41条
  • 労基則6条の2