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■休日出勤を命じられた従業員が年次有給休暇を申請した場合

 取引先への納品が間に合わないため、当社のある部署で休日出勤をしてもらうことにした。

 ところが、ある従業員が、休日出勤の日に年次有給休暇を申請してきた。

 このような申請を受け入れなければならないのか。

 また、この従業員に何らかの処分を科すことは可能か。

 所定休日は、労働の義務がない日なので、年次有給休暇を取得する余地はなく、申請を受け入れる必要はない、となります。

 また、休日出勤の命令に従わない場合、懲戒処分の対象とすることは不可能ではないと考えます。

<POINT1.休日とは>

 労働基準法では、「毎週少くとも1回」、または「4週間を通じ4日以上」休日を与えなければならないと定められており、これを法定休日といいます。

 また、就業規則や労働協約、個別の労働契約により労使が定める休日のうち、法定休日を上回る休日を法定外休日といいます。

 いずれの休日も、使用者が定める所定休日であるため、労働者に労働の義務はありません。

 一方、所定休日以外の日は労働の義務がある日、即ち労働日となります。

 

<POINT2.休日労働とは>

 本来、所定休日は労働の義務がない日ですから、労働者には休日出勤する義務はありません。

 ただし、就業規則や労働協約等において、業務上必要な場合は時間外および休日労働を命じることがある旨の規定があり、かつ、時間外・休日労働に関する労使協定の届出が行われている場合、協定の内容の範囲においてなされる休日出勤の命令は正式な業務命令となり、労働者には応じる義務が生じます。

 なお、法定外休日に出勤を命ずる場合は、協定の時間外労働の範囲内とする必要があります。

 

<POINT3.年次有給休暇が請求できる日>

 労働基準法で定める年次有給休暇の制度は、労働日における労働義務を免除するものです。

 したがって、本来、労働日でない所定休日に年次有給休暇を申請する余地はないといえます。

 ここで、休日労働を命じられた場合、休日労働をする日は労働日ではないかという疑問がでてきますが、休日労働を命じられる日とは、就業規則に定める所定休日のうち時間外・休日労働に関する労使協定の定める範囲内で、臨時的に使用者から命じられるものであり、労働日ではありません。

 また、年次有給休暇の発生要件である8割出勤を判断する際の分母となる全労働日に所定休日に労働させた日は含まないことからも、休日労働をする日は労働日でないことがわかります。

 

<POINT4.年次有給休暇と不利益扱いの禁止>

 労働基準法では、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な扱いをしてはならないと定められています。これは、年次有給休暇を申請する余地のない日に請求した場合でも同様です。

 

<POINT5.お題の場合>

 前記のとおり、従業員が年次有給休暇を請求した日は、休日出勤の命令が出されていても、所定休日であることに変わりなく労働日ではありませんから、年次有給休暇を取得する余地はありません

 したがって、使用者にこの申請を受け入れる義務はありません。

 また、懲戒処分については、年次有給休暇の申請を理由に懲戒処分をすることはできませんが、休日出勤の業務命令に対して正当な理由なくこれに従わない場合であれば、就業規則に照らして懲戒処分の対象とすることができる、と考えられます。

 なお、懲戒処分を行う場合には、その休日出勤命令の妥当性や拒否した理由の正当性等を十分に確認したうえで行う必要があると考えます

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法35条、36条、39条、136条
  • 昭33.2.13基発90
  • 昭63.3.14基発150・婦発47
  • 静内郵便局事件[最判S59.3.27]
  • 日立製作所残業拒否事件[最判H3.11.28]