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■フレックスタイム制の適用対象から不適格な労働者を適用除外にできるのか

 来期からフレックスタイム制を導入しようと考えているが、既に導入している企業からは、時間の管理にルーズな従業員によるトラブルも起こっていると聞く。

 そこで、遅刻回数が顕著な者など不適格と思われる従業員を、当初からフレックスタイム制の適用対象としない取扱いをすることは可能か。

 また、それが可能であれば、あらかじめ適用除外要件を明文化したいと思うが、留意すべきことはあるか。

 フレックスタイム制を導入する場合、労使協定で対象労働者の範囲を特定する必要がありますが、その範囲は制約がありませんので、職種や部署、あるいは個人など任意に対象者を限定することができますし、対象労働者から一定の労働者を除外することもできます。

 フレックスタイム制は労働者が自主的に労働時間管理を行う制度ですから、自ら労働時間管理を行うことが難しい社員などについて、フレックスタイム制の対象から除外する必要があるのであれば、あらかじめ労使協定で明確にその対象から除外する定めをしておくことが必要と考えます。

<POINT1.フレックスタイム制の対象労働者>

 フレックスタイム制の対象労働者の範囲については法令で特に定められていないので、全従業員を対象とすることもできますし、特定の職種や部署、個人によって対象とすることもできます。

 他方、顧客対応などが必要で、フレックスタイム制の対象とすると業務に支障が生じる職種、部署などは対象から除外することができることは当然です。

 いずれにしても対象労働者の具体的な範囲(または対象から除外する範囲)は労使協定で定める必要があります。

 

<POINT2.労使協定で要件を明確に定める>

 お題の場合、フレックスタイム制の導入にあたり、遅刻が多いなど不適格と考えられる従業員をフレックスタイム制の対象にしないことが可能かということですが、定めを明確にすることで可能と考えます。

 すなわち、フレックスタイム制の対象労働者の範囲の定め方は前記のとおりであり、対象から除外する労働者の範囲(要件)を、フレックスタイム制導入時の労使協定で明確に定めることが必要と考えます。

 

<POINT3.フレックスタイム制と遅刻・早退>

 フレックスタイム制は、労働者が各日の始業・終業時刻を自主的に選択できる制度ですから、そこには基本的に遅刻、早退という考え方は当てはまりません。ただし、労働者が労働しなければならない時間帯、すなわちコアタイムを定める場合は別です。このコアタイムを定めることは任意ですから、必要に応じて定めることになりますが、コアタイムを定める場合には、コアタイムの開始・終了時刻を労使協定で定めます。

 フレックスタイム制では、このコアタイムを定めた場合に、その開始時刻に遅刻したり、終了時刻前に早退した場合の取扱いが問題となるものです。

 したがって、お題の場合、フレックスタイム制導入後においても、コアタイムでの遅刻が多い労働者などを対象から除外する必要があるならば、あらかじめ導入時の労使協定において、コアタイムの遅刻の多い者などを対象から除外する定めを明確にしておくことが必要と考えられます。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条の3
  • 労基則12条の3
  • 昭63.1.1基発1・婦発1