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■フレックスタイム制での時間外・休日・深夜労働の取扱いについて

 フレックスタイム制では、清算期間ごとに所定労働時間と実際の労働時間の過不足を清算して賃金の算定を行うそうだが、1日の労働時間が8時間を超えた日や休日出勤した日、あるいは深夜労働した日などは、通常勤務の場合と同じように割増賃金を加算しなければならないのか。

 フレックスタイム制を採用した場合、

  1. 時間外労働については、清算期間を通算して法定労働時間を超えた時間で算定
  2. 休日労働については、毎週1回の週休制の原則が適用され、この休日に労働させた場合には、割増賃金の支払が必要
  3. 深夜労働については、割増賃金の支払が必要

となります。

<POINT1.時間外労働>

 フレックスタイム制を採用した場合、時間外労働については、1日、1週間ではなく、清算期間(3か月以内)を通算して法定労働時間を超えた時間で算定することになります。したがって、三六協定についても、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、1か月および1年について協定すれば足ります。この時間については、2割5分以上の率で計算した割増賃金の支払が必要となります。ただし、1か月に60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上その時間が深夜であれば、さらに2割5分以上を加算した7割5分以上に引き上げなければなりませんので、注意が必要です。

 

 また、割増賃金率の引上げの対象となる時間は時間外労働時間であり、法定休日労働時間は対象ではありません。したがって、時間外労働と休日労働の時間数を区分する観点や、それに伴う割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を就業規則などで明確に区分しておくことが望ましいとされています。この、割増賃金率の引上げ分(2割5分以上)については、事業場で労使協定を締結した場合には引上げ分の割増賃金の支払に代えて、1日、半日、半日または1日を単位とした有給の休暇(以下「代替休暇」といいます。)を法定の有給休暇とは別に付与することが可能ですが、代替休暇を取得するか否かは、労働者の意思により決定されることになります。付与することができる代替休暇の時間数は、1か月60時間を超える時間外労働時間数に換算率(2割5分以上)を乗じた時間となります。

 

 労使協定において、端数として出てきた時間数に、時間単位の年次有給休暇などの他の有給休暇を合わせて取得することを認めた場合は、代替休暇と他の有給休暇を合わせて半日または1日の単位として付与することができます。なお、割増賃金の支払を代替休暇の付与に代えることができる時間数は、1か月60時間を超える時間外労働時間数に換算率(2割5分以上)を乗じた時間部分のみとなります。この他、代替休暇については、付与することができる期間、取得日の決定方法および割増賃金の支払日を労使協定において定めることが必要です。

 

 特別条項付き三六協定においては、1か月45時間・1年360時間の限度時間を超える時間外労働に対する割増率をそれぞれ定める必要があります。

 

 また、清算期間が1か月で完全週休2日制を実施している場合のフレックスタイム制については、一定の要件のもとに時間外労働について特別の計算方法を用いることができます(この点については、後日「週休2日制をとるフレックスタイム制と時間外労働」で触れる予定をしております)。

 

 

<POINT2.休日労働>

 フレックスタイム制においても、労働基準法第35条の毎週少なくとも1回、または4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません

 

 したがって、この、「休日」に労働させた場合には、三六協定の締結と3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません

 

 なお、法定外休日労働(週休2日制の場合の法定休日以外の日の労働)については、清算期間内における労働時間として算入しなければなりませんが、これが法定労働時間の総枠を超えていれば、三六協定の締結と2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

 

<POINT3.休日労働>

 フレックスタイム制においても、労働基準法上の深夜(午後10時から午前5時)に労働した場合には、深夜業として2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条の3、36条、37条
  • 昭63.1.1基発1・婦発1
  • 平9.3.31基発228
  • 「改正労働基準法に関するQ&A」(平31.4厚生労働省)