· 

■労働契約の期間の制限について

 労働契約を結ぶときは、期間を定めないものや、契約社員のように1年などと期間を定める場合がある。

 労働基準法では、3年をこえる期間について労働契約を結んではならないそうだが、労働契約の期間についてどのような制限があるのか。

 労働基準法第14条では、労働契約は、期間の定めのないものを除いて、3年(一定のものについては5年)をこえてはならないと規定しています。この趣旨は、長期間にわたって労働者が拘束されることを防ごうとするものです。

 ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定める場合(建設工事等を想定しています。)については、その期間の終了時までとすることができます。

 なお、期間の上限が5年の労働契約は、平成15年の労働基準法の改正でもうけられたもので、一定の要件に該当する場合にかぎって、締結することができます。

<POINT1.契約期間>

 労働契約は、期間の定めのないものと期間の定めのあるものとに分けられます。

 期間の定めのない労働契約は、労働者はいつでもこれを解約できることとされています。

 民法第628条によると、期間の定めのある労働契約は、期間が満了するまでの間に「やむを得ない事由」があるときには、労働者はこれを解約することができますが、そのような事由がない場合は、解約することができないことになります。

 長期間の労働契約を締結すると、労働者をその期間拘束することになるので、労働基準法第14条では、労働契約の期間を定める場合は、原則として3年(次に述べる一定のものについては5年)をこえてはならないと規定しています。

 一方、次の労働契約については、契約期間の上限は、5年とされています。

  1.  専門的な知識、技術または経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして一定の基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者にかぎる。)との間に締結される労働契約
  2.  満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約。

 ただし、次のアまたはイの場合には、労働契約の期間の上限にかかわらず契約期間を定めることができます。

  • ア.一定の事業の完了に必要な期間(例えば、ある建設工事が終了するまでの期間など)を定める場合
  • イ.職業能力開発促進法の規定による職業訓練のため長期の訓練期間が必要な場合

 

<PIONT2.3年または5年をこえて結んだ労働契約>

 労働基準法第14条に規定する期間(3年または5年)をこえる期間を定めた労働契約を締結した場合、その契約については・・・、

  1.  労働基準法違反となり、処罰の対象
  2.  労働基準法第14条1項で5年が契約期間の上限とされる第1号・第2号に該当するときは、5年とされ、それ以外のものについては3年の契約期間で締結

となります(契約が無効となるものではないこと)。

 

 

<PIONT3.契約期間の更新と退職>

 3年の労働契約の期間が満了し、これを更新することも可能です。

 なお、期間の上限が5年の労働契約を締結し、その期間満了後も引き続いて雇用する場合は、期間の定めのない労働契約か期間が3年または5年以内の労働契約を締結することとなります。

 なお、この点について説明を補足すると、平成15年の労働基準法改正前は、3年の労働契約を締結できる労働者に対して「業務に新たに就く者に限る」との条件が付されていたため、3年の労働契約期間が終了した場合、続けて同じ3年の労働契約を締結することはできませんでしたが、平成15年の改正で「新たに」の語句が削除されたことで、5年の労働契約の更新も可能となりました。

 また、有期労働契約(上限が5年の労働契約を除く。)を締結した労働者は、一定の場合を除き、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した以後においては、いつでも退職することができます(暫定措置)。

 

 

<PIONT4.有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準>

 有期契約労働者について適切な労働条件を確保するとともに、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにするためには、有期労働契約の締結、更新および雇止めに際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにすることが必要であることから、平成15年の労働基準法改正で厚生労働大臣が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を定めることが規定され、平成15年10月に厚生労働省告示357号として次のような内容の基準が示されています(平成24年厚生労働省告示第551号により改正)。改正されたこれらの基準は、平成25年4月1日から施行されています。

  1.  使用者は、3回以上の契約更新をしている有期契約労働者または1年をこえて一定期間継続して雇用している有期契約労働者について、あらかじめ契約の更新をしない旨明示されているものを除き、雇止めをする場合には、少なくとも30日前に予告をすること。
  2.  使用者は、有期契約労働者が雇止めの理由の明示を請求した場合には、遅滞なくこれを文書で交付すること。
  3.  使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、雇入れ日から1年をこえて継続して雇用している有期契約労働者と契約を更新する場合には、契約の実態およびその労働者の希望に応じて、契約期間をできるかぎり長くするよう努めること。

 なお、これらの基準に関し、基準に定める内容に反して労働契約の締結や雇止めがなされた場合にその是正を求める等、有期労働契約を締結する使用者に対して、行政官庁により必要な助言および指導が行われるものとされています。

 

 

<PIONT5.労働契約法による規制>

 労働契約法第17条において、有期労働契約について以下のとおり規定されています。

 まず、一つは「使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇できない。」というものです。

 これは、雇用が存続するはずの契約期間の中途において解雇されると、労働者の生活に大きな影響を及ぼすことから規定されたものです。ここにいう「やむを得ない事由」については、個別に判断するしかないのですが、一般的に言えば解雇の場合の「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」として解雇が有効と認められるときよりも、より狭い(厳しい)と考えられています。

 もう一つは、「使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」というものです。これは、短期間の契約が反復更新されることによって労働者は不安定な立場となることから、有期契約の労働者を雇い入れる目的、就かせる業務の性質・内容などとは無関係に短期間の契約とし、それを使用者の都合によって反復更新することを防ごうという趣旨から定められたものです。

 なお、これは、前述しました「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の適用対象とやや異なり、最初の契約締結時も更新時においても、配慮を求めているものです。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

≪参考となる法令・通達など≫

  • 労基法14条、70条、137条
  • 労働契約法16条、17条
  • 平15.10.22厚労告357(平24.10.26厚労告551により改正)
  • 職能法24条
  • 民法541条、626条~629条、631条
  • 平11.1.29基発45
  • 平15.10.22基発1022001
  • □平24.8.10基発0810第2