従業員が、時間単位年休を取得した日に所定終業時刻後の労働を行った場合、時間外手当はいつの時点から発生するのか。
労働基準法では、2割5分以上の割増賃金(以下、「時間外手当」といいます。)の支払が必要な時間外労働については「実労働時間」で判断されます。
つまり、その日の実労働時間が1日8時間を超えた場合に時間外手当が発生することになります。
したがって、時間単位年休を取得した後、終業時刻後も労働した場合は、年休を取得した時間を除いた実労働時間が8時間を超えた時点から時間外手当が発生することになり、終業時刻からその日の実労働時間が8時間となるまでの時間については通常の賃金を支払う必要があります。
<POINT1.実労働時間主義>
労働基準法では、労働時間について「1日8時間、1週間につき40時間を超えて労働させてはならない。」と定められています。
この労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外手当の支払が必要になるのは、実労働時間が法定労働時間(8時間)を超えて労働した場合ということになります。
たとえば、所定労働時間が8時間の会社で、1時間遅刻した者が1時間残業した場合、「実労働時間」は8時間であるため時間外労働として扱わなくてもよいことになります。
<POINT2.時間単位年休を取得した場合>
従業員が時間単位年休を取得した日の労働時間についても、前述の実労働時間主義の考え方に基づいて取り扱います。
たとえば、所定労働時間が8時間の会社で、2時間の時間単位年休を取得した者が2時間残業した場合、「実労働時間」は8時間であるため時間外手当の支払いは必要ありません。
ただし、時間単位年休を取得した後、終業時刻後も労働する場合、終業時刻からその日の実労働時間が8時間となるまでの時間については通常の賃金を支払う必要があります。
また、時間単位年休の2時間分については、就業規則に定める方法で当該時間に応じた賃金額を支払うことになります。
時間単位年休の賃金額は、
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 標準報酬日額
のいずれかをその日の所定労働時間数で除した金額を、当該時間に応じて支払わなければなりません。
その日の所定労働時間数とは、時間単位年休を取得した日の所定労働時間数をいいます。
<POINT3.就業規則等による別途定めがある場合>
これまで述べてきたとおり、労働時間については「実労働時間主義」をとっていますが、就業規則などの定めによっては時間外労働の取扱いが異なる場合があります。
たとえば、「始業時刻前または終業時刻後に勤務した場合には、給与規程第〇条に定める割増賃金を支払う」と就業規則で定めている場合です。
この場合には、時間単位年休を取得した者が終業時刻後に労働をした時間に対して時間外手当の支払いが必要となります。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
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《参考となる法令・通達など》
- 労基法32条、37条、39条4
- 昭29.12.1基収6143
- 昭63.3.14基発150
- 平11.3.31基発168