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■1か月単位の変形労働時間制⑥~1か月単位の変形労働時間制における休日の振替~

 例えば、月曜日の所定労働時間を10時間、火曜日から土曜日までの所定労働時間を各6時間とする1か月単位の変形労働制を導入しているとして、従業員を日曜日に就業させるために、その従業員の休日を月曜日に振り替えて、日曜日に10時間労働させることはできるのか。

 1か月単位の変形労働時間制を導入している場合であっても、休日の振替はできます。

 しかし、休日を振り替えた結果、就業規則や労使協定で1日8時間または1週40時間をこえる所定労働時間が定められていない日または週に、1日8時間または1週40時間をこえて労働させることになる場合には、時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。

 

 例(「Q」)の場合、日曜日は休日であり法定労働時間をこえる所定労働時間が定められていないので、10時間労働させる場合、そのうち8時間をこえる2時間が時間外労働になります。

<POINT1.1か月単位の変形労働時間制と時間外労働>

 1か月単位の変形労働時間制を導入する際の法的要件(詳細は、前掲「1か月単位の変形労働時間制③~1か月単位の変形労働時間制の要件~■1か月単位の変形労働時間制③~1か月単位の変形労働時間制の要件~ - Epic & company ページ! (epic-company.net)」を参照してください。)を満たすことによって、1か月以内の一定期間において、特定の日または特定の週にそれぞれ8時間または40時間をこえて労働させることができます。

 

 また、1か月単位の変形労働時間制を導入している場合であっても、特定の日または週の労働時間について就業規則等で定めた時間をこえて労働させる場合や、特定の日または週以外の日または週について法定労働時間(1日8時間または1週40時間)をこえて労働させる場合、その時間は、時間外労働時間となりますので、三六協定の締結・届出が必要となり、時間外労働時間に対する割増賃金を支払わなければなりません(詳細は、前掲「1か月単位の変形労働時間制⑤~1か月単位の変形労働時間制での時間外労働~■1か月単位の変形労働時間制⑤~1か月単位の変形労働時間制での時間外労働~ - Epic & company ページ! (epic-company.net)」を参照してください。)。

 

 

<POINT2.休日の振替>

 休日の振替とは、“予め”休日と定められた日を労働日とし、その代わり他の労働日を休日とすることをいいます。

 休日の振替を行うためには就業規則等に休日の振替を行う旨を定めるとともに休日を振り替える前に“予め”振り替えるべき日を特定しなければなりません

 

 したがって、このような手続を行って、休日を振り替えた場合には、本来の休日が労働日となりますので、休日労働に対する割増賃金の支払いも必要ありません。

 

 但し、休日の振替を行った結果、週の労働時間が法定労働時間をこえる場合には、そのこえる時間に対して割増賃金の支払いが必要になりますので、注意が必要です。

 

 

<POINT3.1か月単位の変形労働時間制における休日の振替>

 1か月単位の変形労働時間制を導入している場合であっても、業務上のやむを得ない都合等による休日の振替は可能です。

 但し、1か月単位の変形労働時間制において休日の振替を行った結果、就業規則等で法定労働時間をこえる所定労働時間を定めていない日または週に法定労働時間をこえて労働させることになる場合には、そのこえる時間は時間外労働として扱わなければならないとされています。

 

 例(「Q]の場合では、月曜日(1日の所定労働時間10時間)と日曜日(本来の休日)を振り替えることによって、日曜日が労働日となりますが、日曜日はもともと1日の法定労働時間(8時間)をこえる労働時間が定められていたわけではありません。

 

 したがって、日曜日に10時間労働させる場合、1日の法定労働時間をこえる時間(2時間)が時間外労働となり、その時間に対して割増賃金を支払わなければならないことになります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

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《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条の2、35条、36条
  • 昭23.4.19基収1397
  • 昭23.7.5基発968
  • 昭63.3.14基発150
  • 平6.3.31基発181