· 

■1か月単位の変形労働時間制⑤~1か月単位の変形労働時間制での時間外労働~

 1か月単位の変形労働時間制を導入し実施した場合、時間外労働はどのように算定するのか。

 割増賃金の支払義務の問題も含めて、具体的な例をご教示いただきたい。

 変形労働時間を採用している場合には、所定労働時間(就業規則等で定めた時間)は変形期間内において、1日、1週の法定労働時間をこえて設定されていることもありますが、変形期間を通じて1週平均40時間以内(原則)であればよいので、特定の日、週の所定労働時間が法定をこえていても総枠が法定内であれば、時間外労働とはなりません。

 しかし、実際の労働時間が、法定労働時間または所定労働時間(1日8時間、1週40時間をこえて労働することを定めた場合)をこえた場合には、割増賃金の支払いが必要となります。

<POINT1.時間外労働の算定方法>

 1か月単位の変形労働時間制の時間外労働となるのは、各日、各週、変形期間の各単位でそれぞれ次の時間です。

① 各日について

・8時間をこえて労働することを定めた日は、その所定労働時間をこえて労働した時間

・所定労働時間が8時間をこえない日は、8時間をこえて労働した時間

②各週について(①で時間外労働となる時間を除く)

・40時間(原則)をこえて労働することと定めた週は、その週所定労働をこえて労働した時間

・週所定労働時間が40時間をこえない週にあっては、40時間をこえて労働した時間

③変形期間について(①、②で時間外労働となる時間を除く)

・変形期間における法定労働時間(*)の総枠をこえて労働した時間

 

(*) 変形期間1か月の法定労働時間の総枠

31日の場合…177.1時間

30日の場合…171.4時間

 

 

<POINT2.具体例>

 時間外労働となるか否かは、まず1日単位で、次に1週間単位でとらえて判断し、最後に変形期間単位で判断することとなります。

 具体例にて、この算定方式を確認してみますと次のようになります。

 

 図中の①~⑦を説明しますと、次のとおりです。

  • ① 1日の所定労働時間をこえ、かつ、その所定労働時間が8時間をこえているので法定時間外労働となります。
  • ② 1日の所定労働時間をこえてはいるが、1日8時間、1週40時間をこえておらず、かつ、変形期間の法定労働時間総枠内であるので、法定時間内の所定外労働となり、法定時間外労働とはなりません。
  • ③ 1日8時間はこえていないが、1週の所定労働時間(40時間をこえない設定)をこえ、かつ、1週40時間をこえているので法定時間外労働となります。
  • ④ 1日の所定労働時間をこえ、かつ、その所定労働時間が8時間をこえているので法定時間外労働となります。
  • ⑤ ②と同様、1日の所定労働時間をこえているが法定時間内の所定外労働となり、法定時間外労働とはなりません。
  • ⑥ ⑤と同様、法定時間内の所定外労働となり、法定時間外労働とはなりません。
  • ⑦ 1日8時間はこえていないが、所定労働時間と②、⑤、⑥の合計が変形期間の法定労働時間総枠177.1時間をこえているのでこえた部分は法定時間外労働となります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

――――――――――――――――

《参考となる法令・通達など》

  • 労基法32条の2
  • 労基法37条
  • 昭63.1.1基発1・婦発1
  • 平6.3.31基発181