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■1か月単位の変形労働時間制②~1か月単位の変形労働時間制を導入することは労働条件の不利益変更となるか~

 当社では、月末に業務が集中するため、1か月単位の変形労働時間制の導入を検討している。

 ところが、従業員の中から、「変形労働時間制を導入すると月末の残業が減り時間外手当が少なくなる。これは労働条件の不利益変更に当たるのではないか。」との反対意見が出て、導入を再検討せざるを得ない状況だが、従業員側の主張どおり、1か月単位の変形労働時間制の導入が労働条件の不利益変更になるのか。

 変形労働時間制について未導入の事業所が、新たに変形労働時間制を導入すれば時間外労働については、減少することがあります。

 しかし、時間外労働そのものが、これを行うことについての労働者の権利を保障したものとはいえないので、ただちに制度の不利益変更となるものではありません。

<POINT1.変形労働時間制>

 変形労働時間制の趣旨は、繁忙期と閑散期の調節をとりながら、その期間について労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、業務の繁閑に応じた労働時間の配分を行うことによって総労働時間を短縮することを目的としています。

 したがって、この趣旨に反する導入でない限り、不利益変更であるとはいえないことになります。

 一般的に業務閑散期には本来の所定労働時間を下回る労働時間となり、この分を業務の繁忙期に振り分ける方法であれば、時間外労働は減少することになります。

 

 

<POINT2.時間外労働>

 時間外労働は、本来使用者の裁量により命令によって実行されるものであります。

 したがって、労働者には、そもそも時間外労働をする権利というものは存在しないことになります。ゆえに、時間外手当の減少という側面だけでは、変形労働時間制の新たな導入が不利益変更とまでは評価することは難しいと考えます。

 

 

<POINT3.その他の部分の不利益変更>

 時間外手当の減少の他にも、日によって労働時間が異なることになるなど、変形労働時間制の採用によって、労働時間が不規則となることは否定できません。

 しかしこれについても、突発的に発生する時間外勤務に比較して、労働者が計画などをたてやすいなどの面もあり、一概に大きな不利益が生じるとは考えにくいようです。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

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≪参考となる法令・通達など≫

□昭63.1.1基発1