雇用している従業員で、業務内容によって必要とする作業が異なるため、シフト制を適用しているものがおり、それぞれのシフトごとに勤務時間が異なっている。
そのため、1日単位で付与する年次有給休暇につき、「勤務時間が短い日に年次有給休暇を取得すると損になる。」との見方がある。
このような場合、これに対応した年次有給休暇の制度を検討すべきか。
制度を検討する義務はないが、シフトの勤務時間によって有利不利が発生しないよう、年次有給休暇を取得した日の賃金算定方法を「通常の賃金」から「平均賃金」または「標準報酬日額」に変更する方法が考えられます。
ただし、金額が低くなることに留意し検討することが必要と考えます。
<POINT1.年次有給休暇取得期間中の賃金>
年次有給休暇取得期間中に支払われるべき賃金の算定方法は、次の3つがありあます。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額
これらいずれの方法によるかは、予めらかじめ就業規則等に定めておかなければなりません。また、3.の「標準報酬月額の30分の1に相当する金額で算定する場合は、労働組合または労働者代表等との労使協定の締結が必要です。
<PIONT2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金>
所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次の方法によって算定された金額となります。
- 時給者:時給にその日の所定労働時間数を乗じた金額
- 日給者:日給
- 週給者金:週給をその週の所定労働日数で除した金額
- 月給者:月給をその月の所定労働日数で除した金額
<PIONT3.Qの場合>
年次有給休暇取得期間中に支払う賃金の算定方法を、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金と定めている場合、年次有給休暇取得日の所定労働時間分の賃金を支払えばそれで足りることになりますが、所定労働時間がシフトにより異なる場合には、所定労働時間が短い日が不利になる面があると考えられます。
これに対応する制度を検討する義務はありませんが、有利不利を是正するのであれば、年次有給休暇取得期間中に支払われるべき賃金の算定方法を変えるという方法が考えられます。
前述の平均賃金または標準報酬月額の30分の1に相当する金額を用いて算定することにより、取得日によってその日の所定労働時間が異なる場合でも支払われる1日分の金額は変わらないことになります。
ただし、いずれも通常の賃金の場合より少ない額になるので、この点に留意する必要があると考えます。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
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《参考となる法令・通達など》
□労基法39条
□労基則25条
□健保法40条