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■出生時育児休業制度とは?

 出生時育児休業制度とは?

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」という。)の改正により、主として男性の育児休業取得を促進するために設けられ、2022(令和4)年10月1日から施行される制度。

 これにより、従来からの育児休業に加え、子の出生後8週間以内に、最長4週間の出生時育児休業を取得することができるようになった。

 出生時育児休業は、原則として2週間前までに申し出ることとされ、2回に分割して取得することが可能。

 さらに、労使協定がある場合は、労働者と会社との間の個別の合意により、休業中に一定の範囲で就業することも可能。

<POINT1.出生時育児休業制度の創設>

 男性が出生直後に休業を取得して育児・家事にかかわることは、その後の育児・家事への主体的参加につながりやすく、夫婦が希望する数の子を持つことに資するとともに、男女問わず、ワークライフバランスの取れた働き方の実現にもつながる、とした考え方に基づき、2021(令和3)年6月3日に成立した改正育児・介護休業法において、従来の育児休業制度に加え、子の出生後8週間以内の期間に4週間(28日)まで取得することができる育児休業の枠組みが創設され、2022(令和4)年10月1日から施行されるもの。

 これを「出生時育児休業(産後パパ育休)」といい、この期間中であれば、2回まで分割して取得することが可能。

 これにより、たとえば、子の出生直後や退院時に、出生時育児休業を2週間取得し、里帰り出産等を経て実家から戻る際にまた2週間取得するというような休み方が可能となった。

 また、出生時育児休業は、従来の育児休業とは別の新たな制度として設けられたものなので、出生時育児休業を取得した後に、別途、育児休業を取得することも可能。

 

<PIONT2.「パパ休暇」および 「パパ・ママ育休プラス」との関係>

 改正前の育児・介護休業法においても、男性の育児参加を促進するための制度として、いわゆる「パパ休暇」および「パパ・ママ育休プラス」の制度が設けられていた。

 これらの制度と出生時育児休業との関係は次のとおり。

 

(1)いわゆる「パパ休暇」との関係

 従来の育児休業は、原則として、一人の子につき連続した期間について1回のみ取得でき、分割して取得することはできなかった。

 ただし、子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合は、例外的に休業期間終了後、再度(2回目の)育児休業を取得することが可能とされ、これが「パパ休暇」と呼ばれていた。

 今回の改正により、1歳までの育児休業は、2回まで分割して取得することが可能となり、出生時育児休業の2回と合わせると合計4回まで分割取得できるようになり、そのため、このいわゆる「パパ休暇」の特例は廃止された。

 

(2)パパママ育休プラスとの関係

 改正法施行後も「パパ・ママ育休プラス」の特例は存続するので、従来どおりの利用が可能。

 ただし、この特例を利用した場合、1歳2か月までの間に取得できる育児休業の期間は出生時育児休業の期間を含めて最長1年となる。

 

<PIONT3.出生時育児休業の適用対象>

 出生時育児休業制度については、無期契約労働者はすべて適用対象

 また、有期契約労働者については、子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過すある日までに労働契約が満了することが明らかでない場合にかぎり適用対象となる。

 なお、労使協定を締結することで、次の労働者を対象外とすることが可能

  1. 雇用された期間が1年未満の労働者
  2. 申し出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者
  3. 週の所定労働日数2日以下の労働者

 

<POINT4.出生時育児休業取得の手続>

 育児休業の申し出は1か月前が原則だが、出生時育児休業の申し出については2週間前までに申し出ることとされた。

 ただし、2022(令和4)年4月1日施行の雇用環境の整備などについて義務づけられた内容を上回る取組みの実施が労使協定で定められている場合は1か月前までとすることができる。

 また、2回に分割して取得する場合であっても、初めにまとめて申し出る必要がある。まとめて申し出ない場合には、事業主は2回目の申し出を拒むことができるとされている。

 なお、育児休業と同様に、出生時育児休業開始予定日の繰上げ・終了予定日の繰下げ変更、申し出の撤回が可能

 

<POINT5.出生時育児休業中の就業>

 従来の育児休業制度では、休業期間中に就業することは、原則として認められていなかったが、工場で災害が発生した場合など一時的臨時的な場合にのみ、会社と労働者の合意により、就業することが許されていた。

 これに対し、改正法施行後の出生時育児休業にかぎっては、予め書面による労使協定を締結し、労働者と事業主の個別合意がある場合には、事前に日時を調整したうえで出生時育児休業の期間中に就労することが可能となった。

 あくまでも労働者が希望することが必要であり、事業主から労働者に対して就業可能日等の申し出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いをしてはならないこと。

 また、就業可能日・時間には次の上限が定められているので、遵守ししなければならない。

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分

・休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間未満

 

<POINT6.その他の留意点>

 2023(令和5)年4月から、常時使用する労働者数が1,000人超の企業は、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務づけられるので、留意が必要。

<出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和3年11月作成(令和4年3月改訂)リーフレット№12)」https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/000977789.pdf

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

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《参考となる法令・通達など》

  • 育児・介護休業法9条の2、9条の3、9条の4、9条の5
  • 育児・介護休業則21条の2~21条の20
  • 平21.12.28厚労告509