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■就業前の準備や掃除、朝礼は労働時間か

 当社の始業時刻は午前9時だが、女性従業員は、当番制で30分程前から掃除および湯茶の準備をしている。

 ある女性従業員から、この時間は労働時間に含めるべきではないかという指摘をうけたが、当社としてはどのように扱えばよいのか。

 作業前後の準備、掃除等に要する時間はそれらが使用者の明示または黙示の指揮命令下に行われている限り、労働時間となります。

<POINT1.労働時間>

 労働時間かどうかを判断するには、使用者の指揮監督のもとにあるかどうか、によります。

 この使用者の指揮監督下にあるか否かは、明示的なものであることは必要ではなく、作業前に行う準備や、作業後の後始末、掃除等が使用者の黙示の指揮命令下に行われている場合も労働時間となります。

 黙示の指揮命令を認めた行政通達として、教員が使用者の明白な超過勤務の指示により、または使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合のように、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間をこえて勤務した場合には、時間外労働となるとするものがあります。

 また、坑内労働者の労働時間についてではありますが、入坑前の作業に関し、作業前後の準備または終業に必要ある整理整頓に要する時間について労働時間であるとする行政通達が出されています。

 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平29.1.20基発0120第3)では、「使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間」を労働時間として取り扱わなければならないとしています。

 なお、作業前に行う準備行為について、それが作業にかかる準備行為や作業服に着替える更衣時間であっても、その準備行為等を事業場内において行うことを使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされ、それが社会通念上必要な時間と認められる限り、労働時間として評価するとした最高裁判例があります。

 

 

<PIONT2.ご相談のケース>

 ご相談の件について、当番制で30分前程から掃除、湯茶の準備をしているとのことですが、使用者から当番制を厳守し、30分前から準備することを命じられていることあるいはそれについて黙示の意思が認められる場合には、この掃除等の時間は労働時間として扱うことが必要です。

 なお、従業員による朝の掃除当番があり、掃除当番の者は所定の始業時刻の20分前に出勤することとされていた場合における、当該掃除当番に要する時間について労働時間と認めた判例(東京地判平30.8.22(平29(ワ)2217)があります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※

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≪参考となる判例・通達など≫

□昭23.10.30基発1575

□昭25.9.14基収2983

□平29.1.20基発0120第3

□最判平12.3.9労判778.6

□東京地判平30.8.22(平29(ワ)2217)