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■宿日直をさせるには

 当社では、このたび新工場が完成したが、操業を開始するまでの間、従業員で交替で宿日直させることにしたい。

 このように従業員に宿日直をさせた場合、労働時間についてはどのように取り扱ったらよいか。

 一般従業員に宿日直勤務をさせるにあたっては、勤務の態様、宿日直の回数、宿日直手当の額などについて一定の条件に合うよう勤務体制を設定したうえで、所定の申請書を所轄の労働基準監督署に提出して許可を受ける必要があります。

<POINT1.宿直・日直>

 1日の仕事が終了した夜間や休日であっても、緊急の文書や電話の受付、防災のための構内巡視などが必要なケースも業務の都合上、十分考えられます。そのため、貴社のように従業員をいわゆる宿直日直勤務に就かせる場合があります。

 一般に、 宿直とは夜間にわたり宿泊を必要とするものをいい、 日直とは休日や休業日の昼間に勤務するものをいいますが、勤務内容は同じです。

<POINT2.宿日直勤務と労働時間>

 これら宿日直勤務は通常の勤務と違って、何かがあったときに備えての受動的な業務であり、またその間に何かをしなければならないということもほとんどありません。

 そこで、労働基準法施行規則第23条は「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」について、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、労働基準法の労働時間等の規定にかかわらず労働者を使用することができると規定しています。そして、この許可を受けた宿日直の勤務については、他の断続的労働と同様、労働時間に関する規定のほか休憩、休日に関する規定も適用されません。

 宿日直の許可基準宿日直の許可を受けるには、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」に必要事項を記載して所轄の労働基準監督署に提出しますが、その際、次の条件をみたさなければ許可されませんので留意してください。

  1. 常態としてほとんど労働する必要のない勤務についてのみ認める趣旨ですから、原則として通常の労働の継続は許可されず、定時的巡視、緊急の文書や電話の収受、非常事態発生に備えての待機などを目的とするものに限られます。
  2. 宿日直勤務については、通常の労働に対する賃金とは別に、相当の宿日直手当を支給すること。すなわち、1回の宿日直手当の最低額は、宿日直勤務に就くことが予定されている労働者の1人1日あたり平均賃金の3分の1以上であること。
  3. 宿直、日直の勤務回数が原則として、宿直は週1回以下、日直は月1回以下であること。(但し、当該事業場で満18歳以上のすべての者に宿日直させても、なお不足であり、労働密度が薄い場合には、この制限をオーバーする宿日直も認められることもあります。)
  4. 宿直については、寝具、暖房など相当の睡眠設備を設けること。

<POINT3.申請の押印等の取扱い>

 なお、「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」は、使用者の記名のみで申請を行うことが可能となり、押印まは署名を求められないこととされました。

 電子申請により、この申請を行う際には、厚生労働省の所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則第6条第1項各号に掲げる措置として、例えば電子署名を行い、電子証明書を併せて送信する措置のほか、申請を行う者の氏名を電磁的記録に記録することをもって代えることができます。また、使用者または労働者と社会保険労務士等との間に提出代行に関する契約があることを証明する書面および社会保険労務士証票の写しを添付することにより、電子署名を行い、電子証明書を併せて送信することなく、社会保険労務士等が電子申請による提出代行を行うことも可能です。

<POINT4.宿日直勤務に関する裁判例>

 なお、裁判例では、「断続的な宿直又は日直勤務」として所轄労働基準監督所長の許可を受けている病院産婦人科に勤務する医師の宿日直勤務について、産婦人科当直医に対して予定・要請されている各処置は、いずれも産婦人科医としての通常業務そのものというべきであり、軽度または短時間の業務であるなどとは到底いえないとして、割増賃金を支払う義務があると判示しています(奈良県医師時間外手当事件大阪高判平22.11.16労経速2093.3、最決平25.2.12(平23(行ヒ)59.87))。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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≪参考となる法令・通達など≫

□労基法41条

□労基則23条

□昭22.9.13発基17

□昭23.6.16収監733

□昭33.2.13基発90

□昭43.4.9基収797

□昭63.3.14基発150婦発47

□平11.3.31基発168

□令2.12.22基発1222第4

□令3.3.10基政発0310第1・基監発0310第1・基賃発0310第3

□奈良県医師時間外手当事件(大阪高判H22.11.16労経速2093.3、最決平25.2.12(平23(行ヒ)59・87)