当社は、これからある立ち上げる予定のプロジェクトに即戦力となる人員を契約社員として採用したいと考えている。
契約社員とはいえ、重要なプロジェクトにかかわるのだから、優秀な人材を採用したい。
そこで、採用した契約社員に、2か月の試用期間を定め、その間の働きぶりを確認したうえで本採用したいと思うが、可能か?
契約社員についても試用期間を定めることはできる。
しかし、試用期間満了後に本採用を拒否することは契約期間中の解雇になるので、その場合「やむをえない事由」が必要であり、正社員の場合より難しいとされている。
<POINT1.契約社員の試用期間は定めうる>
試用期間は、一般的には正社員を採用する場合に本採用するかどうかを見極めるために設ける期間。
契約社員等の有期契約労働者は、雇用期間の満了により雇用契約が終了するので、正社員の場合に比べると試用期間を定める必要性は低いと考えられますが、法律上は、有期契約労働者について試用期間を定めることに制約はありません。
なお、試用期間の長さについては、1年以上の長期にわたるものは公序良谷違反(民法90条)として無効になる可能性が高いのですが、2か月ということであれば、特に問題はないと考えます。
<POINT2.試用期間満了後の本採用拒否は解雇>
試用期間を定めた場合、試用期間満了時に会社として当該労働者を本採用するかどうか判断することになりますが、その結果、本採用を拒否した場合、この本採用拒否は解雇にあたります。
期間の定めのない労働契約による「正社員」の場合、試用期間中の労働契約は、使用者の解約権が留保されている労働契約と考えられているので、試用期間満了後の本採用拒否(留保解約権の行使)については、客観的に合理的な理由があって、かつ、社会通念上相当として是認される場合にのみ許されるとされており、本採用後の通常の解雇より、広い範囲で解雇の自由が認められると考えられています(三菱樹脂事件[最判S48.12.12]、神戸弘陵学園事件[最判H2.6.5])。
<POINT3.契約社員の本採用拒否にはやむをえない事由が必要>
これに対して、有期契約労働者については、やむをえない事由がある場合でなければ解雇することはできない(労働契約法17条)とされているので、契約社員の試用期間満了後の本採用拒否にあたっては、契約期間中の解雇と同様の「やむをえない事由」があることが必要になります。
この「やむをえない事由」については、雇用期間の満了を待たずに解雇を行わなければならないほど予想外で切迫した事情が必要とされています。したがって、契約社員の本採用拒否のハードルは正社員の場合より相当高いものと考えます。
今回のケースのような場合、契約期間について、いきなり長期とせずに、段階的に、更新時に期間を延ばしていくという方法なども考えられます。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております。
――――――――――――――――
≪参考となる法令・通達など≫
□労働契約法16条、17条
□民法90条